やっと赤い運命が終わった

前回の「疑惑」がアイドルドラマの王道だったのに 今作は三浦友和も出ず
あまり大成しなかった南條豊が相手役で ちょっと華やかさに欠けていた。
なので今更見るつもりはなかったが 途中から見たら当たり前に三国連太郎
神演技にハマってしまい(苦  毎日浩市くんにそっくりと思いつつ。
大体「王道楽土」なんて言葉を今聞くのも凄く揺さぶられたし。


つまり恋愛ドラマではないに等しく 前作に比べても視聴率が落ち込んだだろうと
思っていたらとんでもなく むしろ「運命」はシリーズ最高視聴率だったそうな。
今でも変らぬ宇都井健のイヤーな演技が見れるし百恵自身もたいした演技するほど
シーンが多いわけでもない。大映色は強いけど これは人間ドラマだったのだな。


なんせ根底に脈々と流れるテーマは戦争だから。


見ていた当初は子供心にオープニングに流れ 物語の中核を成す「伊勢湾台風」が
未だに印象に強いのだけど キモは「満蒙開拓青少年義勇軍」なのだ。
まったくインターネッツのある今は素晴らしいね。子供の頃そんなものを調べるにも
学校の図書室しかないようなところでは理解は遠いわなー。コドモだし。


先日の東宝満州にいた話を読んだのと同様以上のことだった。
劇中スーさんが「シベリアで強制労働させられて」と言うくだりが不思議で。
不毛地帯壱岐さん」のように軍人として行った人がシベリアに抑留という意識
でしかなかったし 東宝の人のように民間人はそこまでされることはないだろうと
軽く考えていたが それは大きな間違いであったのだな。


コドモと言える年齢の人間に軍事訓練を受けさせ 武装農業移民として満州
送られた人々の苦悩。
東宝の人が言うように 関東軍の主要な人は敗戦を知ると共に既に前線から
撤退し 知らない一般人がソ連軍の攻撃を受けつつ今では笑い話にできるほど
なのとは大違いで それこそ残虐に蹂躙された呪詛がこのドラマの元だった。


スーさんが復讐を狙う 満蒙開拓青少年義勇軍の元上官コウノが 今では地位も
名誉もある人物だが どうみても右翼ヤクザの親玉ですありがとうございました
みたいな見方が出来るのも 大人になった証左だわねーと自覚したり。
見ていた当時の意識とはまたまるで違う感想が沸いてくる。


昔の上官殺しともう一件殺人の前科を持つ 直情型で荒っぽい労働者をやる
スーさんが子供心にも気持ちが悪かったが(照れたり言葉にならぬもどかしさを
手の平いっぱい使って頭を撫でこする様とか もう異質に見えたんだな昔)
まぁ昔も今も およそ大映ドラマの色にはまるで合わない人でしかないんだが
完全に他の役者を食っちゃってるもの。志村喬さんですらw まさに怪演。


これがまさに自分の父親と大して変らぬ世代だと言うのが悩ましい。
こんな戦争の被害者もいれば ウチの親のように平和でワガママを満喫したような
人間もいるわけで まさに島崎スーさん英次の苦悩と呪詛はこれに尽きる。
大映演技には鼻白むけど このドラマは再見してよかったと思う。


しかし親の都合で南條豊の相手を勝手に変えるのだけはありえない。
宇都井も百恵も 殺人者に人の心を取り戻させるなどとキレイゴト抜かしているくせに
南條にはそっちじゃなくてこっちの女を押し付ける。南條はモノじゃない。
まるで人として見ていないのが盾と矛と言わずしてなんでしょう。胸糞悪い。
ハタチ前後の男と女なんて 何もそこでツガワせなくとも星の数ほどいるのにさ。
こういうところがアホくさいのだな。まっドラマだけど。