憚りながら 読了

言わずと知れた元後藤組組長が引退に伴って出した本。
自叙伝とは言えインタビューを元に起こしたブツだが 発行が宝島ってだけでおのずとw


私的には県内であったこと バブル時の不動産に曲がりなりにも関わったことなどから
知った名前や前後関係がたくさん出てくるのは面白く楽しく読むことはできた。
野村秋介さんとのくだりも 自決後すぐ病院で警察と丁々発止を繰り広げたまでは
知らなかったが 関係者が野村さんの友人であったしちょっと親近感。


一般人から言わせると要は行動の是非がけしからんということだろう。
ヤクザだ一般人だと区別なくして言うならば 彼の行動原理は私もなぞることなので
シンプルに意味合いが解るし 人として成功するための最低限の一端はヤクザモノと
毛嫌いすることなく有用であると考える。
なんでかと言うと 意識してか単なる一般論をたくさん書いてあるからだw


学会や佐川に糸山との悶着や伊丹十三の事件 他 当事者の視点からなるほどと
思えることもたくさんあるのだが 語っているようでキレイに逃げ打ってるとこはお見事。
後から聞いたらウチのあんちゃんたちの仕業だが俺は知らん「もんで」w
この語尾につける「もんで」も富士宮方面の方言でこんな言い方をした人もたくさん
巡り合ってるから懐かしさがこみあげたりもした。


実際何十年か前の後藤組の忘年会でお座敷ストリップの宴会写真見たことあるw
まぁ富士宮ということで同じ県内と言っても後藤組はやはり西がメインだったと思う。
伊豆にも神戸の枝組織はあったが元々テキヤが強かったり熱海の関係があったりと
複雑だった場所なのでいろんな人は見てきたが 温暖な土地柄なせいか共存意識が
それなりあったように思う。どこか呑みに行ってもフツーにその系の人たちいたしなぁ。
店でもやってれば毎年盆暮れに熊手とか何か売りにも来るし。
大昔千本のオヂサンに一杯ご馳走になったことすらあるくらいw
今ではどうか知らないけどみんな潰れて吸収されてるんじゃないかなとは思うが。


まぁいずれにせよかっこつけた話だなぁと。
下のものから吸い上げるんじゃなく食わせていった話に終始してるけどそれはない。
枝の枝ですら・・・なのに直参ともなれば毎月神戸に持ってくオコメも半端ある訳ない。
若い頃おかみさんに苦労させた話もあるけど ヤクザの女房を水商売で稼がせてなど
当たり前の話で その金で上納だ他のねーちゃんと遊ぶだ色々。それを耐えられて
歳取って捨てられることもなく「姐さん」などとふんぞり返られるのもこれまた一部。
家田の本は知らんけど 映画の「極妻」なんかもファンタジーでしかない。


単に上場企業並みに有名で フロント企業なんかではなく純粋な「後藤企業」という
カイシャの経営者ということだ。
そりゃあ「シャイン」を食わせる図式になるというもの。シャインは利益カイシャに入れるもの。
日本のヤクザであれだけの豪邸をTVでばんばん流されたのも後藤さんくらいのもので
金銭的にも地位的にもあそこに至るまでの苦労は並ではない。
トヨタやソニーの平社員になることは可能でも社長クラスになるのはほんの一握りと同じ。
大変有能なビジネスマンであるということ。おまけに武闘派の冠までついてるけどw
要は金儲けの才能に秀でてる人なのだな。昔の侠客ならいざ知らず現代ヤクザに
必須は金かねカネ以外の何物でもないし。


ヤクザ論とか後藤組のヒミツ♪なんて意識で読んではダメなもの。
猪木が後藤組に仕事頼んでケツ捲くった話は如何にも半島的で面白かったぐらいで
ご本人なりの武勇伝と肝移植(これも知らなかったFBIと裏鶏とか真偽不明な話も)
から死を免れ得度まで。今後は世の為イイ人になりますよーって宣伝かな。


今更あんまり後藤組に興味がなかったんで 引退に関してやそれに付随する神戸との
関係は興味深かった。
暴対法くらいまでの知識しかなかったが 今では組長の使用者責任までがんじがらめ
やられて ある意味よい潮時の引退だったと思う。今更懲役はイヤだろう。
名刺に山菱マークも組名も入れられなくなったのすら初めて知った。
でも「菱(りょう)」なんて会社名で来られちゃ三菱の関連会社かと思うじゃんね。
まーるで知らない10代の兄ちゃんがつまんないことして後藤さんどころか六代目までも
やられちゃうってのも凄いことだし。もうヤクザも時代にそぐわないのだなあ。


もうひとつには 六代目を褒めてはいるけどやはり代替わりで神戸の新しい面子から
すれば後藤さんは煙たい存在だったのではないかな。
交通整理に秀でていたと思われる宅見さんが生きていたらまだ残ってたかな?とか。
盃を「なおした」というのも面白かった。今までの本家とは兄弟盃だったと思うが
新しい人からは叔父貴だったところが 分はわからないけど兄弟分になるんだろう。
そうだとすると古参は古参であんまし気のいい話じゃないだろし。
引退を機に直参を二人に増やして入れ込んだのが最後の良い仕事だったのかも。


まぁ自分にとっても浦島太郎みたいな話なんでよくわかんないけどw
改正暴対法は良いけれど ヤクザ推奨論などするつもりもないけれど 古き世にして
十手取り縄をヤクザモノに任せてきた歴史があり いつの世もモメ事や半端モンはいて
その受け皿のヤクザがいなくなるのもどうなんだろうとは思う。
いま流行りの愚連隊みたいな加減を知らないポンスケが増えるだけじゃないだろうか。
抗争の巻き込みで一般人が死ぬなんてのは論外だが 後藤さん曰くアキバの事件
みたいに一般人のポンスケが一般人を殺す時代なんだもの。そっちのが怖いよ。


最後の方に長谷川公彦wの悪口が書いてあった。
これ穿ってみると紳助相手じゃなくて 話題の橋本さんなる人と反目だったのかなと。